ポケモンと期待値について 【再投稿】

期待値は確率論の用語で、ざっくり説明すると、サイコロや宝くじのように、確率的に振る舞う事象から、どれだけのリターンが得られるかの「見込み」を表現するものです。
具体的には、起こりうる全てのパターンについて、起きる確率とリターンの積を取って合計を求めます。
例えば、ジョーカーを抜いたトランプ一組から、ランダムに1枚引いたときのランクの期待値は次のように7になります。

(1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12+13)/13
=((1+13)+(2+12)+(3+11)+(4+10)+(5+9)+(6+8)+7)/13
=(14+14+14+14+14+14+7)/13
=(2*7+2*7+2*7+2*7+2*7+2*7+7)/13
=13*7/13=7

厳密な理屈とかはWikipediaで見てもらうとして、期待値の落とし穴をポケモンをダシに語ってみようと思います。
期待値が上手く働かない状況としては、サンクトペテルブルグパラドックスがありますが、それとは違うアプローチでいってみます。

ポケモンの技には、「威力」と「命中率」という数値がそれぞれに設定されています。
「命中率」は読んで字のまま。技が命中しないとダメージは0になります。「威力」の方は、ポケモンの戦闘のダメージは次のように使われています。

ダメージ=攻撃側ステ/防御側ステ×(特性とか持ち物とかの色んな補正)×技の威力×(特性とか持ち物とかの色んな補正)

つまり、ダメージと比例関係にありますので、ダメージの期待値は威力の期待値で置き換えることが出来ます。

ということで、技毎の威力の期待値を計算してみます。
当たった場合は威力がそのままリターンになり、外れた場合はリターンは0になるので、次のようになります。

威力の期待値=命中率×威力+(1-命中率)×0=命中率×威力

例えば、威力120、命中率70%のふぶきの場合は、120*70/100=84が威力の期待値です。
一方、威力95、命中率100%のれいとうビームの期待値は、95*100/100=95となり、ふぶきよりも高くなります。
ダメージが大きい方が相手を倒しやすいので、リターンの見込みが大きいれいとうビームを選択すべきということになります。

所が、れいとうビームよりふぶきを選択すべき場面は、わりと結構想定できます。

まずは、使っているポケモンユキノオーだった場合。これは問答無用でふぶきを選択すべきです。
というのもゆきおこしによって天候が霰になり、ふぶきが必中になるからです。
ユキノオーの隣にいるグレイシアなども吹雪にすべきでしょう。

と、いう話でなくて。

例えば、CS最速ユキメノコサザンドラと対面した場面を考えます。
まずこちらが攻撃を食らうと、ユキメノコの耐久は残念な上に弱点を突かれるので、ゴミのように死にます。

サザンドラ Lv.50
  → ユキメノコ Lv.50
ダメージ: 180〜212
割合: 124.1%〜146.2%
回数: 確定1発
急所ダメージ: 360〜426
割合: 248.2%〜293.7%
補正: (ダメージ補正なし)
技: あくのはどう
威力: 80
タイプ: あく*/特殊
特攻: 177
特防: 90
最大HP: 145
天候: (ふつう)
相性: ×2

最低ダメージが200%を越してるので、ユキメノコは二度死にます。急所ダメージでした。てへ。
ですが、サザンドラの素早さ種族値は97に対して、ユキメノコは110あります。ゲンガーと同じゴースト最速です。氷でも最速クラスです。(氷最速はマニューラ
ということで、サザンドラに先制で一撃入れる事が出来ます。

ユキメノコ Lv.50
  → サザンドラ Lv.50
ダメージ: 132〜156
割合: 79%〜93.4%
回数: 確定2発
急所ダメージ: 264〜312
割合: 158%〜186.8%
補正: (ダメージ補正なし)
技: れいとうビーム
威力: 95
タイプ: こおり*/特殊
特攻: 132
特防: 110
最大HP: 167
天候: (ふつう)
相性: ×2

しかし、れいとうビームではこの通り殺しきれません。次のターンにいぬじにです。
所がこれがふぶきだと

ユキメノコ Lv.50
  → サザンドラ Lv.50
ダメージ: 164〜194
割合: 98.2%〜116.1%
回数: 乱数1発 (87.5%)
急所ダメージ: 330〜390
割合: 197.6%〜233.5%
補正: (ダメージ補正なし)
技: ふぶき
威力: 120
タイプ: こおり*/特殊
特攻: 132
特防: 110
最大HP: 167
天候: (ふつう)
相性: ×2

確定ではありませんが、殺せる可能性が出てきました。悪は滅びるのです。(87.5%の確率で)

定義を見ると分かりますが、期待値というのは要するに平均値なので、試行回数が多くないとあまり意味のある数値になりません。
ギャンブルにおいてトータルで勝つ事を目指すならば期待値は重要な概念ですが、1確、2確が横行する環境において目の前の勝負に勝つ事を目指すならばあまり役に立たないのです。

ポケモンのような環境では、平均値ではなく最大値/最小値が重要になります。
一発耐えるなら、平均値なんかどうでも良くて、最大値だけ見れば良いですし、一発で倒すなら、平均値なんかどうでも良くて、最小値だけを見れば良いです。
この辺の確定計算の話をすると、また長くなるので、この辺で。

ちなみに、サザンドラと対面したユキメノコの最適解は、ふぶきではなく、れいとうビームを打ってタスキで耐えて、返しにもう一発れいとうビームです。

お後がよろしいようで。